殷の暴君であった紂王(ちゅうおう)。牧野の戦いで殷が滅び周がうまれた!武王の誕生。

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禅定ではなく放伐という形で殷王朝を開いた湯王ですが、その殷王朝も夏王朝と同じ末路をたどることになります。

禅定(ぜんじょう)…位を世襲せずに、徳のある者に王位を譲ること。

放伐(ほうばつ)…徳のある者が暴虐な王を武力で追放して王位に就くこと。

目次

殷の暴虐王

時は流れて30代紂(ちゅう)王の時代の話になります。夏王朝の桀(けつ)王とともに暴虐王として中国史に名前を残している紂王ですが、以外にも優れた青年だったようです。

『史記』によると生まれつき知能が高く、弁舌に優れ、物事の理解力に優れていたと言われています。また人一倍腕力があり、素手で猛獣も打ち倒すことが出来たとか。

しかし優れた能力は時として臣下の諫言(かんげん)をやり込めることに使われました。例え己に非があろうとも、持ち前の口のうまさで言葉巧みに言いつくろいました。

そうした日々が続く中で、紂王は天下には自分以上に優れた人間はいないと考えるようになります。家臣たちに傲慢な態度をとり、酒と女におぼれ暴虐の限りを尽くすようになったのです。

紂王が最も寵愛したのは妲己(だっき)という女性です。紂王は人民から税を搾取すると、その金で彼女のために豪華な離宮を建てます。

そして酒で園庭の池を満たし、焼いた肉を木につるし、裸にした男女にそこで追いかけっこをさせるという酒池肉林の遊びにふける始末。

こんな紂王を人民たちは嫌い、諸侯の中にも紂王に背く者が続出します。すると紂王はそれらの者をことごとく処刑するという恐怖政治を布いたのです。

殷王朝への反乱

このような悪政が繰り広げられる中で、紂王に反旗を翻す男が現れます。紂王を補佐する三公(さんこう)の一人だった西伯昌(せいはくしょう)の子である姫発(きはつ)です。

己の徳をひたすら修め、自領で善政を布いた西伯昌のもとへは、殷を見限った多くの諸侯が集うようになっていました。『論語』の「泰伯篇(たいはくへん)」によると、

殷の治世下にあって、天下の三分の二を有していた。

とあることから、もはや紂王には何の権威も無かったことが分かります。

牧野の戦い

西伯昌は紂王に戦いを挑むことなく亡くなりますが、その跡を継いだ姫発は紂王を討伐することを決意。

父である西伯昌の位牌を奉じた姫発の元には、多くの諸侯が集まりました。

前1046年、姫発は戦車300乗、勇敢な戦士3千人、兵士4万5千人という陣容(じんよう)で東征を開始します。そして殷の都の南に位置する牧野(ぼくや)に陣を布いたのです。

姫発の反乱を聞いた紂王はなんと70万もの大軍を差し向け、抑え込もうとします。数の上では殷の軍が圧倒的でしたが、紂王の悪政に嫌気がさしていた殷軍の兵士たちは皆、一様に戦意がありません。

また本心では姫発が紂王を打ち倒すことを望んでいたので、わざと武器を逆さまに打ち、姫発軍に道を開く始末だったとか。特に戦いらしい戦いも無く、殷軍は総崩れとなりました。

天命が尽きたと悟った紂王は戦場から王都に逃げ帰り、金銀宝玉を全身にまとい、火中に身を投じて自害を遂げました。

周王朝の始まり

こうして殷王朝を滅ぼした姫発は、天命を受けて王となることを諸侯に宣言。鎬京(こうけい)に新たな都を建設し、武王(ぶおう)として即位し、周王朝を開きました。

殷王朝を倒して周王朝を建国した武王でしたが、亡き殷の勢力がいまだ各地に存在していたため、その治世は安定したものとは言えませんでした。

そんな状況下、武王は病に倒れ崩御してしまうのです。

世の中に不穏な情勢が漂う中、武王の跡を継いで即位したのはまだ幼少の太子・誦(しょう)です。成王(せいおう)ですね。幼く政務をとることが出来ない成王の代わり、武王の弟・周公旦(しゅうこうたん)が後見役となり、政事の一切を司ったと伝わっています。

周公旦はとても優秀な人物で、強大な殷の残存勢力による反乱を制圧したり、封建制を推進して地方の反乱分子を抑えたりと、周の盤石な支配体制を作り上げていきました。

また当時、周の都は西方の陝西(せんせい)にありましたが、東方の支配には不便だったので、現在の洛陽の地に新たな都・成周(洛邑)を建設しました。

これによって元々の都は宗周(そうしゅう)と呼ばれることになり、周王朝には2つの都が存在することになりました。

こうして周公旦のもと、安定した国家基盤が築かれたこともあり、成王とその子・康王(こうおう)の時代には40年余りにも及ぶ平和な時代が訪れ、刑罰を行う必要がないほどだったと言われています。

司馬遷の『史記』に関する大きな流れをまとめた記事はこちらです。

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